⑤ 医薬品の開発、承認取得時の資料作成時に気を付けること 

新薬コラム

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今回は、医薬品の開発時、あるいは承認取得時に種々の資料を作成しますが、文章の中身や技術的な事は別にして、ここでは読み手の立場を考慮して、気を付けるとよいことに関し、以下の2点について、お話します。
(1) PMDAや厚生労働省の審査官も、ヒトであることを忘れてはいけない。
(2) 一般的な文章の書き方と違って、例えば、申請資料などの文章では、特に気をつけたい点がある。

それでは、順番にご説明します。

(1) PMDAや厚生労働省の審査官も、ヒトであることを忘れてはいけない。
  新薬の開発においては、治験実施計画書、治験概要書、本治験を科学的に妥当と判断した理由書、患者さんへの説明文書、総括報告書、承認申請資料、添付文書、リスク管理計画書等、種々の書類を作成し、PMDAや厚生労働省の確認、審査を受けることになります。
 製薬企業の担当者からすると、これらの資料を作成するに当り、当局に提出する公の文章と位置付けて、文章の作成を行っています。つまりは、読み手というヒトの立場に立って文章作りをするよりは、どうしても、得られたデータを基に如何に新薬の承認を取得するかに主眼をおいて、文章を作成していくことになります。ここで問題は、読み手のことを考えて、読み易いかどうか、記載されていることは理解しやすいか、余計なことが長々と書かれてないか、ストーリーの流れは把握し易いか、会社の希望や要望が延々と書かれてないか、文章の長さは全体として適当か等が考えられているかどうかという事です。
 会社側の担当者は、当局に対して公文書としての承認申請書を記載している意識でいますが、実際には当局の中の担当官が提出された資料を読んで審査することになります。従って、上記の事例で挙げた部分が気になるような事があると、読み手もヒトですから、いくら我慢して読み込んで頂いたとしても、やはり途中で、読みたくなくなるのが自然な反応だと思います。もちろん、会社側の担当者としては、データがいまいちの場合、得られたデータのいい面を中心に記載して、十分お化粧をして、何とか承認を取りたい気持ちになりますが、お化粧しても、結局は何が事実か分かってしまいますので、その方針は無駄のように思います。
 従って、申請資料という公の文章と言えども、仕事だから何を書いても読んでもらえるだろうと考えるのではなく、読み手の立場を考えて、文章作りをするほうが、効率的、効果的ではないかと思います。

(2) 一般的な文章の書き方と違って、例えば申請資料等の文章では、特に気をつけたい点がある。 
 PMDAや厚生労働省に提出する文章は、「一般的に言われている分かり易い文章の書き方」に重複する部分もあると思いますが、念のため、文章の作成時に気をつけたい点をいくつか取り上げたいと思います。

1) 結論の要旨を初めに記載する。
2) 各項目内で、これから、どの順番に説明するか、ストーリーを明示しておく。
3) 内容は科学的なデータに基づいたものに限り、希望的な見解や個人の意見は含めないことにする。4) 説明のストーリーの起承転結は簡潔にし、お化粧のための回り道はしないようにする。
5)文章は短めにして、出来るだけ箇条書きにする。
6)長々とした文章は、分かりずらいので、途中で文章を分割する。
7) 図表化出来るものは、分かり易くなるように工夫する。
8)データ等の引用がある時は、引用先がすぐわかるようにしておく。
9) 理解してほしい部分、重要な部分等は太字や下線を引く等、メリハリをつける。
10)略号等は、最初のページにある略号の一覧表に戻らなくてもわかるように、そのページ内に説明を加えておく。

 以上、文章の記載方法はそれぞれの会社に規定があると思われるし、また、一般の文章の記載留意事項と同じような内容もあるので、あくまで事例として挙げたものです。今回、話題にしたかった点は、読み手がヒトであるということは、体調がいい時も、体調がすぐれない時もあるし、気分が良い時も、気分がすぐれない時もある等、審査官も普通のヒトと同じように喜怒哀楽はあるはずです。従って、例えば申請資料の作成時の文章と言えども、読み手に少しでも、気分よく読めて、分かり易い文章にすることは、忘れてはならない配慮と考えます。

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