5)医薬品の製造受託会社でもGMP違反による業務改善命令が発出!

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2021年前後に後発医薬品企業等で発生したGMP(Good Manufacturing Practice) 違反による業務停止処分が出され、その後、全国的に医薬品の供給不足が発生し、現在でも医薬品の供給不足の問題は継続していて、患者さん、医療機関、薬局に多大な影響を与えている。

こうした状況の中で、今回秋田県の「ニ〇ロファーマ〇舘工場」で、以前と同じように、医薬品の製造にあたり厚生労働大臣から許可を得た製造承認書とは異なる方法で試験をしたり、製造の逸脱に対する薬事的対処を行わなかったり、虚偽の試験記録の作成を行ったりと、基本的には以前と同じような医薬品医療機器等法(以下薬機法)に違反する行為が行われており、業務改善命令が出されている(業務停止命令が出されなかったのは、社内の一部門が起こした問題で、組織的なものではない事から判断されたと言われている)。

 このような問題は、2016年に熊本県の「化〇研(今は存在しない)」が承認書と異なる方法で製剤を製造し、組織的に隠ぺいしていた事件があり、110日間の業務停止処分を受けている。これ対し、当時の厚生労働省は製薬メーカー各社に対し、承認書に従って医薬品を製造しているか自己点検を行うように指示し、多くのメーカーから手続き上の問題が見つかり対応を行うよう指示が出されてます。

 各製薬メーカーは、承認書からの逸脱を起こさない努力を行ってきたにもかかわらず、上記のように2021年以降に、後発医薬品企業、医薬品製造受託会社、医薬品製薬会社で下記のように、同じような薬機法の違反例が発覚し、業務停止処分及び業務改善命令を受けています。

 年  月日   会社名都道府県業務停止期間
20212月9日 化工福井県116日間
  3月3日日〇工富山県32日間
 3月26日岡〇化〇工業京都府12日間
 8月12日久〇製薬佐賀県 8日間
 9月14日北〇本製薬富山県28日間
 10月11日長〇堂製薬徳島県31日間
 11月12日松〇薬〇工業愛媛県65日間
 12月24日日〇製薬滋賀県75日間
20223月28日共〇薬品兵庫県33日間
 9月2日辰〇化学石川県(但し、業務改善命令)

 このような不祥事が生じる原因としては、非現実的な生産計画、人手不足、GMPの理解不足、製造所への監査不足、経営層の医薬品製造に対する意識の問題が挙げられ、その対策として厚生労働省は、無通告査察からGMP監査マニュアルの作成、GMP教育支援課の創設等GMPの知識や監査技術の底上げを図ると共に、経営層に対する意識改革等も進めている。

 しかしながら、薬機法違反を起こした企業の多くは、10数年前から同じような事を繰り返していたと証言しており、2016年の「化〇研」の事件が表に出て、それに対する承認書と実際の製造方法の齟齬を見直し、是正する機会が与えられたにもかかわらず、その絶好のチャンスを活用することなく、不正を意識的に続けざるを得なかったのは、長期間に形成された企業文化が新たな変化を受け入れなかったか、それを受け入れる経営状態(経営層からの圧力)になかったか、例えば毎年行われる薬価の改訂により、生き残るにはリスクを取って不正を続けるしかなかった等、別の要因があるのかもしれない。
 いずれにしろ、このような不祥事は氷山の一角ではないが、根本的な問題が解決されない限り、今後もまだまだ似たような事件は、起こり得ると考える。

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