医薬コンサルティング, 新薬開発, 臨床試験, 承認取得,
今回は医薬品の流通経路における卸売販売業者に関するお話をします。説明する内容としては、以下のうな内容となります。
1）医療用医薬品の流通販売経路について
2）卸売販売業者の主な機能
（1）物流機能
（2）販売機能
（3）情報機能
（4）安全性管理機能
それでは順番に説明したいと思います。
1）医療用医薬品の流通販売経路について
医薬品医療機器等法によれば、医薬品は薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、医薬品を販売してはならないことになっています。そこで、通常、医薬品の製造販売業者は、以下の図に示すように、卸売販売業者を通して医薬品を病院、診療所、薬局に販売しています。医薬品の製造販売業者が、薬局に直接医薬品を販売することは法律上可能ですが、殆どは下図のルートで販売されています。
医薬品製造販売業者は卸売販売業者に医薬品を販売し、卸売販売業者が、病院、診療所、薬局に医薬品を販売することになります。卸売販売業者の営業社員は、MS（マーケティングスペシャリスト）を呼ばれていて、製造販売業者が製造した医薬品の価格交渉を病院等と個別に行い販売活動を行っています。つまり、MSは医薬品の価格決定権を持ち、病院等と価格交渉を行い、販売活動後に売上金を回収することになります。
医療用医薬品の流通経路
2）卸売販売業者の主な機能
医薬品業界において、卸売販売業者は、下図に示すように大きく分けて4つ機能を持っていて、患者さんが医薬品を使用する上で大事な役割を担っています。
（1）物流機能
初めに、物流機能についてですが、医薬品の仕入・品揃・受注・入庫・出庫・保管管理・配送・納
品・記録・回収・返品対応・不正流通の防止等に関し、多くの薬剤に関して、医薬品の供給と品質管
理を行っています。
この中には、麻薬・向精神薬、覚せい剤原料に関する業務も含まれますし、また、特に取扱い上注
意するものを管理品目、自主管理品目として、手順を遵守して販売しています。
（2）販売機能
医薬品の販売活動は、MSが各病院等と個別に行っていますが、MSは多くの製造販売会社の医薬品の製品知識を求められ、医師や薬剤師等顧客のニーズにあった製品を提供することが求められます。また、前述したように医薬品の価格決定者として、製造販売業者から購入した価格（仕切価）と各薬剤の公的価格（薬価）の範囲の中で、病院等に販売する価格（納入価）をいくらにするか交渉する必要があります。病院等は儲けを出すために、薬価より出来るだけ低い納入価（薬価差）を求めてきますが、低く設定すると仕切価に近づいて、卸売販売業者の取り分が少なくなってしまい、売り上げが少なくなってしまいます。従って、医薬品の病院等との価格交渉は重要な仕事になっています。
（3）情報機能
情報機能としては、取り扱っている全ての薬剤の添付文書情報、自主回収、販売中止等の情報を収集し、病院等に提供したり、医薬品の適正使用に係わる事案（医薬品の破損、異物混入、数量違い等）を収集し、製造販売業者に情報を連絡する必要もあります。また、生物由来製品については、病院・診療所等への納入情報を製造販売業者等に提供することが義務付けられています。
（4）安全性管理
製造販売業者から、製造販売後安全管理に関する業務、あるいは市販直後調査の一部業務の受託業務を行う場合には、安全性情報（医薬品の品質情報、有効性情報、有害事象情報）の収集、安全管理情報（緊急安全性情報、安全性速報、添付文書の改訂、適正使用のお願い等）の文書の配布、製造販売業者が自主回収を決定した場合、医療機関からの当該製品の回収、営業所の在庫製品を製造販売業者へ返却する必要があります。また新医薬品の市販直後調査を受託した場合には、対象期間6ヶ月の内、最初の2ヶ月以内は2週間に1回、3ヵ月以降は1ヶ月に1回の頻度で、市販直後調査期間中であること、医薬品との関係が疑われる重篤な副作用が発現した時は、MRやMSにすみやかに報告してほしいこと等のリマインドを行うことになります。
以上のように、医薬品を患者さんが使用するうえで、医薬品の製造販売会社の他に、実際の患者さんの手元に渡るまでの、医薬品の供給、品質管理、情報の提供、安全管理等に卸売販売業者が多くの面で係わっています。製造販売会社は数多くあり、医薬品の数も多くある中で、卸売販売会社が担う役割は、医薬品業界が機能するうえで、非常に重要である事を、忘れないようにしたいと思います。
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