① 医薬品はヒトにとって異物である。

新薬コラム

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 これは小職が薬学生になって初めて認識したことですが、医薬品と言えども、ヒトの身体の中にはない物質であるので(ヒトの身体から取り出した成分を利用する特殊なものは除きます)、まず、基本的な事として、「医薬品はヒトに取って異物である」ことをよく理解する事から始める必要があると思います。ヒトにとって異物である以上、通常は何らかの悪影響があっても何らおかしな事ではなく、ヒトの身体は異物を早く排泄するための機能も備えています。
 つまり、医薬品には、通常、病気を治すための作用(主な薬理作用)とヒトの身体に害を与える作用(副次的な薬理作用:副作用と呼ばれています)を併せ持っているものになります。当然、新医薬品の開発に際しては、ヒトの病気を治す効果(主作用)が顕著に発現し、害になる作用(副作用)は、ほとんど生じない物質を求めて、数万~数10万に渡る候補品から、理想に近いものを選び出して、新医薬品の開発を行い、期待された効果と優れた安全性が示されたものが、薬剤として厚生労働省から承認を取得する事ができることになります。
しかしながら、このようにして選ばれ、承認を取得した薬剤と言えども、「医薬品はヒトに取って異物である」という事実は永遠に変わらない事から、安全と言われても、副作用は当然のことながら、何らかの形で生じることになります。いくら臨床試験を国内外で実施して、多くの安全性に対するデータを保有していたとしても、あるヒトに取っては、その薬剤に対する感受性が、通常のヒトとは異なって、重篤な副作用が生じる場合もある事は忘れてはいけない事と言われています。
 医薬品を使用するという事は、患者さん個々人の体質、合併症、病歴、併用薬等を十分考慮した上で、その薬剤を使用するベネフィット(効果)が、リスク(副作用)を明らかに上回る可能性が高いと判断できる場合であるという原則を、医師も患者さんも、常に忘れずに、よくよく理解しておく必要があると思います。このような基本的な原則が、時に忘れられ、医薬品が安易に使用されて、不幸な結果に至った事例を、いつも頭に入れておく必要があると考えます。

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