2)後発医薬品企業等で発生したGMP違反発覚による業務停止処分!

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 過去2年位に渡って、10社近い後発医薬品企業等が、医薬品製造業の許可要件であるGMP(Good Manufacturing Practice)違反により、業務停止処分を受けています。内容は2020年12月に、ある企業で発覚した不祥事と同じようなもので、製造承認書と実際の製造方法が異なっていたとか、製造方法の変更の薬事手続きを行っていなかったとか、製造記録の改竄や捏造といったものになります。その原因も、以前と同様、非現実的な生産計画、人手の不足、GMPの理解不足、及び製造工場への監査不足と、同じような内容でした。
 ここ数年で10社近くが続けて行政の摘発を受けていますが、これらは氷山の一角という訳ではなく、一部の会社の企業風土(経営者の意識)に起因して、後発医薬品に対する国民の信頼を根底から失う結果をもたらしたと考えられます。つまり多くの後発品企業では、このような法律違反は起こしていないと信じています。
 そもそも、日本の高齢化に伴い膨大に膨れ上がった医療費を抑制する対策として、政府主導で、先発品から、薬価が安い後発医薬品へ、短い期間で80%以上への切替えを進めてきました。あまり話題になっていませんが、この数値ありきの一方的な目標の弊害として、一部の後発医薬品企業では、それに対応できず、従前の製造方法のやり方を変えられずに、一連のGMP違反を起こす事に繋がったとも考えられます。もちろん、今回のような不祥事を起こした企業を擁護するつもりはなく、結果として医薬品の安定供給の確保が行えずに、患者さん、医療機関等に多大な影響を与えたことは、許されるものではありません。
 このような不祥事に対し、厚生労働省はGMP監査のテコ入れを図るため、監視指導課が厚生省研究班に製造販売会社が製造所の監査を行う際のマニュアル作成を依頼し、2022年度内に案を纏める事にしています。またPMDAは、今年4月に「GMP教育支援課」を新設し、都道府県による立ち入り調査の質を確保するため、教育の支援を行っています。さらに、大学においても、今年から東京理科大学、熊本保健科学大学、富山大学にGMPの人材育成の目的で、GMPの教育・研究を行う講座を新設し、学生だけでなく、企業や都道府県のGMP担当者の知識・技術レベルの向上を目指す活動が始まっており、その成果が期待されている所です。
 膨大な医療費の抑制を実現するには、政府が強力なリーダーシップを取って舵取りをしなければなりませんが、GMPを遵守して医薬品の製造を行うには、GMPを実現化する人員・人材の確保(簡単には人は育たない)や構造・設備等への資源の投資も見据えながら、薬価の安い後発医薬品へ切替える施策を進める必要があったことも、医療費抑制策の実現化における反省材料にすべきと考えます。また、GMP関係者の知識や技術のレベルが向上したとしても、製薬会社の経営層による医薬品製造に対する「意識改革」が実際に実現化しなければ、直面している問題から抜け出すのは、かなり厳しいと考えられます。

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